ジュエリーは「繊細なもの」です。

これは私がアドバイザーとして、お客様に必ず最初にお伝えすることです。貴金属はやわらかいからこそ、繊細で美しいデザインを実現できます。でも同時に、強い力や衝撃を与えると変形してしまいます。

変形すると何が起きるのか。宝石に緩みが出たり、最悪の場合は外れて紛失してしまうことがあります。実は私自身、何も知らなかったころに大切な人からいただいた指輪をずっとつけっぱなしにしていたら、宝石が外れてなくなってしまったという経験があります。それはとてもショックな出来事でした。

だからこそ今回は、デザインによって着け心地と耐久性がどう変わるのかをお伝えしたいと思います。知っておくだけで、大切なジュエリーをより長く美しく使い続けることができます。

宝石の留め方と耐久性の違い

ジュエリーの宝石はさまざまな方法で留められています。デザインによって輝き方だけでなく、耐久性や日常使いのしやすさが大きく変わります。代表的な留め方を3つご紹介します。

覆輪留め(ふくりんどめ)

宝石の縁を一周、地金が覆っているデザインです。爪がないため引っかかりにくく、宝石がしっかり保護されています。似たデザインに「ころし留め(伏せこみ)」があります。ころし留めは石の周辺の地金を寄せて留める方法で、覆輪留めとは固定のしくみが異なります。

最大のメリットは爪がないため引っかかって外れるリスクが少ないこと。また、宝石が実際より大きく見える効果もあります。注意点としては、ほかの留め方と比べると汚れが溜まりやすいため、こまめなクリーニングをおすすめします。

爪留め

宝石を複数の爪で固定するポピュラーな留め方です。爪の本数が多いほどしっかり留まります。6本爪はティファニーセッティングが有名で、クリーニングもしやすい留め方です。

2点留め

光を最大限に取り込めるデザインで、ダイヤモンドの輝きを最高に引き出してくれます。ただし2点でしか固定されていないため、変形による石揺れのリスクが高く、宝石部分に衝撃が加わると変形がなくても石揺れすることがあります。輝きを存分に楽しみたい特別な日向けのセッティングといえます。

着け心地を左右する「裏無垢」と「裏抜き」

指輪の内側を気にしてみたことはありますか?実は指輪には大きく「裏無垢」と「裏抜き」という2種類のつくりがあります。見た目は同じでも、着け心地や耐久性がまったく異なります。

裏無垢(うらむく)

内側まで地金が詰まっていて、空洞のないつくりです。

メリットは圧倒的な着け心地の良さ。なめらかで指通りがよく、裏がフラットなため汚れも溜まりにくいです。地金を贅沢に使っているため重量感があり満足感が高く、強度があるためゆがみも出づらいです。一生ものとして使い続けたい結婚指輪には、裏無垢を選ぶのがベストです。

裏抜き(うらぬき)

ボリュームのある部分に空洞を作ったつくりです。

メリットは重量の軽量化と、ボリュームリングをリーズナブルに楽しめること、そして指への圧迫感が軽減されることです。裏抜きのジュエリーが駄目というわけではなく、むしろ市販のジュエリーには裏抜きのものの方が多いです。デザインや用途に合わせて選ぶことが大切です。

つけっぱなしにおすすめなデザイン

前回の記事でお伝えした通り、つけっぱなしにしたい場合は素材だけでなくデザイン選びがとても重要です。アドバイザーとして自信を持っておすすめできるデザインを2つご紹介します。

地金デザインのリング

宝石が入っていないシンプルな地金だけのリングです。石が外れる心配がなく、つけっぱなしに最も向いているデザインといえます。シンプルだからこそ地金の質感や仕上げの美しさが際立ち、長く飽きずに使い続けられます。

引っかかりのない・地金たっぷりのデザイン

ダイヤモンドなど宝石が入っていても、引っかかりのない覆輪留めや伏せこみで、なおかつ地金をたっぷり使用した肉厚なデザインであれば、つけっぱなしのリスクをぐっと下げることができます。変形しづらく、宝石もしっかり守られています。

繊細なジュエリーを長持ちさせる使い方と保管のコツ

細い爪留めや2点留めなど、繊細で美しいデザインのジュエリーをお持ちの方に、アドバイザーとしてお願いがあります。

できれば外出からの帰宅時に外し、お出かけの仕上げとして着けていただくのが理想です。「外したら無くしてしまいそう」という声もよく聞きます。そんな方には、ジュエリーを置いておく場所をひとつ決めることをおすすめしています。定位置を作るだけで、紛失のリスクはぐっと減ります。

もうひとつ、保管の際に意外と見落とされがちなポイントをお伝えします。それが「硬度」の違いです。

ジュエリーにセッティングされている宝石には、ひっかき傷にどのくらい強いかの目安として「硬度」が設定されています。ダイヤモンドは地球上で最も硬いとされており、ダイヤモンドを研磨するにはダイヤモンド自身を使うほどです。ということは、ダイヤモンドのついたジュエリーと硬度の低いジュエリーがぶつかるような状態で保管すると、やわらかい方の宝石に傷がついてしまいます。

お互いがぶつからない保管方法として、ジュエリーケースに入れるか、一点ずつ個別に保管するのがベストです。ちなみにジュエリーの数が増えてくると、皆さまジッパー付きの小袋に落ち着かれることが多いです。私自身もそうしています。

以前、普段使いでつけたいというお客様がダイヤモンドのデザインリングをご購入されました。2ヶ月ほど後、修理でお持ちになった指輪は深い傷と変形、ダイヤも外れた状態でした。お話ではガーデニングで重い石を持ち上げるときもつけっぱなしだったとのこと。状態がかなりひどく、お修理には見積が必要とお伝えすると、そのままお持ち帰りになられました。その後どうなったかはわかりませんが、あのときもっと早くお伝えできていれば、という思いが今でも残っています。

ジュエリーは「芸術作品」です。そして大切に使っていただくと、何世代にもわたって受け継いでいける品でもあります。どうか自分の体の一部と同じように、大切にしていただけると嬉しいです。

まとめ
  • 宝石の留め方で耐久性が変わる 覆輪留め・爪留め・2点留めなど、留め方によって日常使いのしやすさが大きく異なります。2点留めは輝きが最高ですが、つけっぱなしには向きません。
  • 裏無垢と裏抜きで着け心地が変わる 一生もの・結婚指輪には裏無垢がベスト。ボリュームリングを楽しみたい場合は裏抜きという選択肢も。
  • つけっぱなしにするなら地金デザインか覆輪留めを 宝石なし・または引っかかりのない覆輪留めで地金たっぷりのデザインが安心です。繊細なデザインは特別な日に存分に楽しんでください。
大切なジュエリーだからこそ、デザインの特性を知った上で使い方を選んでほしいと思います。